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彩雲の店長です。上海万博のネパール館でタンカと出会い、一目で魅了されました。これをきっかけにして神様仏様に関連する彩雲ショップをやることに決めました。よろしくお願いします。

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仏教美術について(密教美術〜後期)

4.密教美術〜後期
密教は「金剛頂経」の成立によって、ひとまずの完成をみた、ということができます。しかし、インドにおいて密教は、その後もさらに展開を遂げていきました。8世紀末以降に新たな密教経典が続々と生み出され、それらは無上瑜伽タントラと呼ばれ、さまざまなマンダラや後期密教美術品がつくられていきました。

現在、インドでは当時つくられたマンダラは皆無に近い状態です。しかしインド仏教を最後まで摂取しつづけていたチベットやネパールには、後期密教のマンダラも数多くが今日まで伝えられ、また現在でも描かれています。

日本の密教は、「金剛頂経」を代表とする中期密教の経典までしか実質的には伝えられませんでした。後期密教の経典はいくつかが宋の時代に漢訳されましたが、その頃の中国仏教界はすでに密教は主流ではなくなっており、また後期密教経典に説かれる特異な実践や教理が中国では受け入れられず、日本の密教にも大きな影響を与えることはありませんでした。

後期密教の特異な実践とは、一言でいうと「性的ヨーガ」の採用です。後期密教では、「象徴するものと、それが象徴しているものは同じ」と考え、仏陀の智慧=女性、慈悲=男性と当てはめました。悟りとは、智慧と慈悲がひとつになった状態です。そのため男性と女性が合一した状態を悟りそのものである、とみなしたのです。これを実現するために性的な実践法を取り入れました。ただし、単なる性行為を実践法としたのではなく、ヨーガという彼ら独自の実践システムの中に位置づけ、「性的ヨーガ」として確立しました。

<密教パンテオンのほとけたち〜チベット・ネパール>
後期密教の無上瑜伽タントラの隆盛とともに秘密仏といわれるヘールカ系の守護尊や、明妃といわれる女尊などが数多く登場し、従来のほとけたちとともに信仰されるようになりました。そのようなほとけたちは下記のような「密教パンテオン」と呼ばれるグループを形づくっています。

(1)如来・仏(にょらい・ほとけ)
(2)菩薩(ぼさつ)→観音菩薩その他の菩薩
(3)女神(じょしん)
(4)忿怒尊(ふんぬそん)
(5)護法神(ごほうしん)
(6)祖師(そし)
(7)秘密仏(ひみつぼとけ=ヘールカ)

(1)如来(にょらい)
如来・仏とはすでに悟りを得たほとけを指します。このグループには日本でもよく知られる釈迦如来や薬師如来がいます。また、「五仏」と呼ばれる大日、阿閦、宝生、阿弥陀、不空成就は特に重要視されています。また、上記の「密教パンテオン」では(7)秘密仏として別グループとして記しましたが、これら秘密仏も如来のグループです。

後期密教の無上瑜伽タントラで「秘密仏(ヘールカ)」が登場し、これらの仏は、いずれもヒンドゥー教のシヴァ神の図像的要素、思想的要素を基礎概念として、それに仏教の教義を付け加えたものと解釈されています。人を恐れさせるような外見をし、また不浄とみなされる骨、血、皮などの土着的な要素がふんだんに取り入れられています。特にチベットやネパールで人気のある仏です。

密教では、僧侶や寺院が密教パンテオンから一人のほとけを選び、自分の守り本尊にする習慣があります。チベットでは、この守り本尊を「守護尊(イダム)」と呼びますが、多くの場合これらのヘールカ仏が守護尊として選ばれます。

ヘールカ仏には、グヒヤサマージュ(秘密集会)、チャクラサンヴァラ(勝楽)、へーヴァジュラ(呼金剛)、金剛バイラヴァ、カーラチャクラ(時輪)などがいます。ヘールカは一般に身体は青黒く、多くの顔と腕をもち(多面多臂ためんたひ)明妃(みょうひ)と呼ばれる配偶女尊と交わった姿をしています。

(2)菩薩(ぼさつ)
菩薩は悟りを開いて如来となるために修行に励むほとけです。菩薩の修行とは、世の中の生きとし生けるものを救うことであり、これは大乗仏教のなかでも最も基本的で重要な修行です。如来たちはすでに悟りを開いていて、どちらかというと私たちには遠い世界へ行ってしまったというイメージがありますが、菩薩はこの世の中にとどまって迷ったり苦しんでいる人々と接しながら、彼らを導こうと常に努力しています。このグループには、観音、文殊、弥勒、普賢、地蔵、金剛薩埵などがいます。

チベットでも菩薩の中では観音が最も広く信仰を集めています。「大乗荘厳宝王経(だいじょうしょうごんほうおうきょう)」が説く四臂観音は「オンマニペメフン」の六字真言を仏格化したもので、「六字観音」と呼ばれます。チベットにおける観音の標準的スタイルです。

観音についでポピュラーな菩薩は文殊菩薩です。チベットでは多くのバリエーションがあり、最も一般的なのは剣と梵筐(ぼんきょう)をもつスタイルで、、日本の五字文殊(アラパチャナー文殊)に相当するといわれています。

(3)女神(じょしん)
ヘールカ仏についで後期密教の美術的特色は女神の大幅な進出です。ブッダの生涯を記した仏伝では、ブッダの悟りを最後に邪魔したものは悪魔が遣わした女性たちの美しい姿であり、ブッダはその女性の誘惑に打ち勝って悟りを得たといわれています。ですから元来仏教では、異性との接触はタブーとされていました。大乗仏教が起こり、さまざまな種類のほとけたちが生まれた後も、そのようなほとけたちが妃を抱いた姿で表されることはありませんでした。

しかし密教が盛んとなり、血や骨、皮といった「不浄なもの」と考えられる要素、あるいは性行為など「隠しておくべきもの」とされる要素が、悟りを得るための手段として積極的に取り入れられるようになると、ほとけたちは自分たちの妃を抱いた姿で表されるようになりました。

また7世紀以降ヒンドゥー教では女神崇拝が盛んになり、仏教もその影響を受けました。ヒンドゥー教の男神の妃としての女神は「シャクティ」と呼ばれますが、「シャクティ」とはこの場合「力」のことで特に性力、つまり性的なエネルギーを意味します。仏教においても女神たちは自分のパートナーである男神のエネルギー源なのです。

インド、チベット、ネパールの密教パンテオンでは、女神は高い地位を占めています。さまざまな女神たちのうち仏眼仏母(ぶつげんぶつも=ローチャナー)、白衣明妃(びゃくえみょうひ=パーンダラヴァーシニー)、マーマキー、ターラーの4人は「法界語自在マンダラ」では大日以外の5仏のうちの他の4人の仏の妃(四妃)とされます。

「法界語自在マンダラ」とは、金剛界マンダラの流れをくむ重要なマンダラです。「法界自在」とは文殊の別名で、「真理の世界の言葉に自在なもの」を意味し、マンダラの中尊がこの文殊です。一般には文殊は菩薩ですが、ここでは大日如来と同体、仏とみなされます。

仏眼仏母はブッダの眼がもつ力を神格化した女神で、五仏のうちの阿閦如来の妃とされています。白衣明妃は阿弥陀如来の妃とされ、白衣をまとい白蓮華の中に住んでいます。日本では白衣観音と呼ばれて、観自在のひとりとみなされています。マーマキーは宝生如来の妃ですが、阿弥陀如来の妃とされることもあります。この女神はチベット、ネパール、中国でよく知られています。日本では胎蔵マンダラに「忙莽鶏(もうもうけい)」として登場します。ターラーは日本では多羅菩薩と呼ばれ不空成就如来の妃とされています。

そのほか般若仏母や般若波羅密多女、ヨーギニー(瑜伽女)やダーキニー(荼枳尼)など、数ある女神のなかでも特に広く信仰されたのはターラーです。ターラー女神は起源的にはまだ不明な点が少なくありませんが、観音の涙の池に咲いた蓮華の中から生じたという伝説があり、古くから観音に結びつけられています。

(4)忿怒尊(ふんぬそん)
如来、菩薩以外で密教パンテオンにおいて比較的高い地位にいる男神のグループが忿怒尊です。忿怒尊は仏教の教えを守るため、教えに従わない者たちを恐ろしい姿で威嚇しながら教えに導く役割を担っています。忿怒尊にはマハーカーラー(大黒)、アチャラ(不動)、十忿怒尊(じゅうふんぬそん)などがいます。チベットには「明王」という概念がなく、日本の明王に相当するほとけは忿怒尊と呼ばれています。

後期密教では「十忿怒尊」と呼ばれる10人の忿怒尊のグループが活躍します。後期密教経典の「秘密集会タントラ」にもとづくマンダラには、ヤマーンタカ(大威徳明王)、ハヤグリーヴァ(馬頭明王)、トライローキヤヴィジャヤ(降三世明王)、また上に述べたアチャラなど10人の忿怒尊が登場します。これら10人はマンダラの空間に妨害者が入り込まないよう、しばしば10本の刃が付いた車輪型の武器(防御輪)に乗っています。またこれら十忿怒尊のうち、ヤマーンタカやハヤグリーヴァなどはチベットではしばしば守護尊として選ばれます。

(5)護法神(ごほうしん)
マンダラにおいては、しばしばヒンドゥー教起源の神々があらわれます。これらの神々は護法神と呼ばれます。ヒンドゥー教以前のブラーフマニズム(バラモン教)の時代にあらわれ、現代のヒンドゥー教でも信仰されているインドラ(帝釈天)、アグニ(火天)、ヴァルナ(水天)、ヤマ(閻魔)など8人の神々は東西南北とその中間の八方位を守護する神々(八方天)として密教パンテオンに取り入れられています。これらの神々は星神たちと同様にマンダラの外側に位置し、マンダラの空間を守る役割を担っています。

ヒンドゥー教においてはブラフマー、シヴァ、ヴィシュヌの三男神がよく知られています。そのうち日本でも梵天という名で知られるブラフマー神は、仏伝ではブッダに仏教の教えを人々に対して説くよう勧めるという重要な役割を担って登場しますが、密教パンテオンではそれほど重要視されることはなく、マンダラの中心にあらわれることはありません。同様に現代のヒンドゥー教ではブラフマー神よりも大きな信仰を集めているシヴァ神やヴィシュヌ神も、密教パンテオンでは高い地位を占めていません。

〜星神〜
仏、菩薩、女神、忿怒尊以外に密教パンテオンには、日、月および火星や水星などの惑星や、定期的に月が宿る星座(星宿せいしゅく)などが神々として取り入れられています。これらの星神たちはしばしばグループであらわれますが、その代表に九曜(くよう)があります。「九曜」とは太陽(スーリヤ)、月(ソーマ)、火星(マンガラ)、水星(ブダ)、木星(ブリハスパティ)、金星(シュクラ)、土星(シャニ)の7つの星(七曜)と日月食(ラーフ)および彗星(ケートゥ)が神格化された9人の神々を指します。

「法界語自在マンダラ」においては、この「九曜」が28種の星宿(二十八宿)などとともにマンダラ内部の神々を守るように、マンダラのいちばん外側に位置しています。

(6)祖師(そし)
チベット仏教では師(ラマ)が重要視されますが、ある宗派の創始者や非常に活躍した僧侶(祖師)たちはとくに高い地位を占めています。祖師のひとりであるパドマサンバヴァは、9世紀に仏教を伝えるためにインドから招かれた僧侶シャーンタラクシタとともにチベットにやってきたといわれます。チベットに初めて仏教僧院サムイェ寺が建てられたとき、チベットの土地神たちの妨害によりなかなか工事が進ます、パドマサンバヴァは超能力により土地神たちを降伏させたといわれています。このパドマサンバヴァはチベット仏教のもっとも古い宗教であるニンマ派の創始者とされています。

ツォンカパは16世紀ころのチベットで活躍した僧侶です。学問と修行に励むうち、瞑想中文殊菩薩から教えを受け、仏教思想の体系をまとめたといわれています。ツォンカパは現在のチベット仏教の中心的な宗派であるゲルク派の創始者です。

祖師たちは以上にあげた人物以外にも、有名なヨーガ行者であるミラレパやその師マルパ、またチベット仏教サキャ派で活躍したサキャ・バンディタなどがいます。チベットでつくられた密教図像集には、仏や神々と並んで祖師たちの図像が含まれています。祖師たちはしばしば仏や神々と同等の地位を占め、信仰の対象となっています。