明識主観自在
めいしきしゅかんじざい
ネパールの百八観自在(108観音)
観自在が文献において明確にあらわれるのは、紀元2世紀後半頃成立したとされる大乗仏教経典、「法華経(ほけきょう)」の第24章「普門品(ふもんぼん)」においてです。
「普門品」はサンスクリット語で「あらゆる方角に顔を向けた仏」という意味でそこには将軍や商人などいろいろな姿で人々を救う観音が登場しますが、観自在が観自在という性格をもちながら姿をさまざまに変化させはじめたのは8世紀頃といわれています。
観自在にはどんな者でも救わねばならないという菩薩としての役割があり、そのために人々を引き付け、魅了する必要があったといわれ、胸飾(ネックレス)や腕釧(ブレスレット)や耳環(イヤリング)などの多くのアクセサリーを身につけ、多くの顔と多くの腕をもつ多面多臂(ためんたひ)の姿となったのはそのためと思われます。
ネパールの仏教はインドの伝統を受け継ぎつつも、インドにはみられない独自の観自在の宇宙を構成したと言われています。
そのもっとも有名なのが、ネパールの百八観自在で、百八の観自在をひとまとめにして信仰する習慣です。
身につける装身具や手にもつ法具、顔と腕の数、そして身体の色がさまざまな観自在の化身が108尊。
観自在自身が観自在としての性格や特徴を失うことなく変化した姿、「108の変化観自在(変化観音)」への信仰です。
ネパールの首都カトマンドゥ市にあるマチェンドラ・ナート寺に百八観自在の絵が入口から出口まで横並びに掲げられていて、
参拝者は108種すべての観自在をお参りできるようになっています。
このうち日本でお馴染みの観自在は、1番目の聖観自在、52番目の千手観自在、日本では明王として知られる
108番目の馬頭観自在、また日本やインド、中国では観自在とは別の種類の菩薩ですが、普賢観自在がいます。
インド以来の観自在としては、37番目の不空羂索観自在(ふくうけんじゃくかんじざい)、
103番目の六字観自在(ろくじかんじざい)、22番目の獅子吼観自在(ししくかんじざい)などがいます。
ヒンドゥー神の名前や持ち物をもつ観自在もいます。
たとえば、12番目のヴィシュヌチャクラ観自在は右手にヒンドゥー教のヴィシュヌ神の武器である輪(チャクラ)を持っています。
さらに、ネパールにおいて古くから知られた観自在の説話を図像化したものもあります。
57番目の諸天生成観自在で、この絵には観自在の身体の各部からヒンドゥーの神々が生み出されるありさまが描かれています。
生きとし生けるものを憐れみ、いつもじっと観ている観自在菩薩。
慈しみの心と、果敢な行動力とが備わった観自在菩薩。
多くの国で愛され、信仰され続けている菩薩です。
■サイズ(縦×横):310×240mm
■生産国:ネパール
※タンカのみの販売です。額はついていません。
「純金からつくられた金泥が輝きます」
如来や菩薩を描いた仏画はチベットネパールの伝統美術で『タンカ(Thanka)』と呼ばれます。
熟練したタンカ絵師が長い時間をかけて丁寧に描いています。
絵具は鉱物性顔料(※1)と合成顔料のポスターカラーを使っています。
また金の発色は24金から作られた金泥(※2)が使われています。
※1鉱物性顔料―天然鉱石を砕いて作られた絵具。
天然ものなので他の色味をもつ鉱物が若干混ざっており、そのため独特な色合いと深みを持っています。
日本では日本画の画材「岩絵の具」と呼ばれ、古くは古墳時代の遺跡にも見られます。
代表的な色と鉱石は、青−琉璃(ラピスラズリ)、緑−孔雀石(マラカイト)、赤−辰砂(シンナバー)など。
※2金泥(きんでい)―純金の粉を膠(にかわ)の液で泥のように溶かしたもの
タンカの価格は、緻密さや全体のバランスなど絵師の熟練度によっても決まりますが、
一般的に、高価なタンカはより多くの鉱物性顔料と、24金から作られた金泥が使われています。
108観音には多くの鉱物性顔料と金泥が使われています